二人の歌姫

菅野と、東京は六本木で共演を続けているヴォーカルは二人の歌姫である。菅野が二人を評価してのことはもちろんのことだが、筆者も大好きであることを知って、菅野から好きな理由を文章にせよとの厳命?が下された。途方にくれながらもトライしてみることにした。(青山記)

さがゆき

即興いのちの歌姫である。ギター弾きでもあって正確なリズムに加えてときおりハイノートの小唄ばりのお洒落な音を間に(すきまに)はさむ。

菅野と六本木の「クラブt」で初めて共演した夜の彼女の異常ともいえる興奮ぶりがいまでも脳裏に浮かぶ。一期一会のその場限りの演奏にかける菅野に彼女の「インプロ魂」が呼応したのに違いない。以来菅野との共演に彼女の興奮はさめることなく「即興いのち」を存分に発揮できて実に楽しそうである。

私が好きなもう一つの理由は彼女のアドリブにジャズの伝統の息吹を感じることである。彼女独特の即興のなかに、(ニューオリンズからジャズに入門した私にとって、)時として、デキシー、スウィング時代、モダンジャズの初期の香りを感じて至福の時をすごすのである。

菅野と彼女のもうひとつの共通点は「旅」である。二人とも、国内はもとより数十か国に外遊?している。各地の風景、風俗、人情、食べ物、音楽にふれ、味わうたびに、その音楽の「がら」が大きくなり、詩心が純粋にそして豊かになって一皮むけ続けているのだろう。時として、彼女の唄から各地、各国の語り部のハートが聞こえてくるのである。

森 郁

ひと昔前、菅野は恵比寿の「サンマリノ」で定期的にライブを行っていた。そのオーナーの加藤さんが店をたたんで一年後ぐらいに、彼女(加藤さん)は恵比寿のホールを借りて菅野のライブを催した。その夜、加藤さんが声をかけて菅野と共演したヴォーカリストは5名。そのうちの一人が森郁である。深夜拙宅に戻った菅野と私は彼女の歌の素晴らしさに「驚いた」と語りあった。

先般、六本木の「キーストンクラブ」に遊びに来ていたキューバ人の歌手のアレキサンダーが彼女の唄を聴いて「13年間でほとんどすべての日本の歌手の唄を聴いたが、彼女ほどTuningの素晴らしい歌手はいない」と絶賛した。実にそのとおりであって、高い、低い、大きい、小さいすべての声の音程が完璧である。とりわけ小さい声のTuningは比類なく、例えば小さな音で終わるエンディングのピアノとのハーモニーに何度身震いしたことか。

また、彼女はメロディと歌詞を非常に大切にしていて、その上での表現には説得されてしまう。スローな曲で “Still I want you”などと唄われると自分のことではないと重々わかりつもドキマギし上気してしまうのである。

(追記)

二人の歌姫は全く違うタイプの唄だけれど、二人とも好きなもう一つの理由は、姫たちにヴィブラートが少ないことである。気品高いのである。ただ、ヴィブラートの多用に卑しさを感じるのは私だけかもしれない。

(後記)

キーストンクラブ東京で、12月8日(金)には、さがゆき を、12月28日(木)には 森 郁 をお楽しみいただけます。両日お越しいただきご確認いただければ幸甚です。